協業組合初の株式会社化、そして農業法人の設立
「感謝」の気持ちを忘れない、生真面目で誠実な蔵元

     

     小鹿酒造株式会社 代表取締役 岩下健一郎さん

昭和46年、鹿屋の片田舎の小さな蔵元が集まり、「小鹿酒造」は協業組合として創業した。南国の地が生みだす自然の恵みに感謝し、先人から受け継いだ焼酎造りの技と心を大切にし、そして何より地元・鹿児島の人々に支えられて日々歩み続けてきた小鹿酒造。堅実に歩みを進め、人知れず努力・創意工夫を重ねる誠実な蔵元。その姿勢を近くで見てきた地元鹿児島の焼酎ファンから絶大な指示を得ている。平成19年、創立36周年を機に、協業組合組織から株式会社に改組。初代社長に岩下健一郎氏が就任した。


Q.鹿児島県外にアピールする蔵元が多い中、小鹿酒造が地元にこだわる理由を教えて下さい。


 我々は元々、4つの小さな蔵が集まった協業組合から出発しました。経営的に厳しい状況もありましたが、原材料であるさつま芋を生産する農家の方々、そして我々の焼酎を愛飲し続けて下さる地元の方々のおかげで今の小鹿酒造を築くことができたと思っています。そもそも「小鹿」の名前が広く認知されるようになったのも、小鹿を応援して下さる鹿児島県内の小鹿ファン「小鹿会」の方々が中心となって、小鹿の焼酎を広めてくれたからです。私たちは今日まで小鹿を支えて頂いた全ての方々に感謝の気持ちを忘れずに、地元の人々に愛される焼酎造りを目指していきたいと思っています。


Q.協業組合では初の株式会社化、その理由をお聞かせ下さい。
 

 より良い会社をつくってこそ、より良い焼酎が生まれると思っています。会社経営の中枢には役員だけではなく、社員も登用する。一生懸命に仕事を頑張っている社員が、夢を持てる会社組織にしていきたいと思い、株式会社への移行を決断しました。役員就任に関しても血縁関係を抜きに社員個人個人の努力・評価から決めていきます。このような会社組織から、焼酎造りに対しても社員1人1人が向上心を持って取り組んでいけるのです。



Q.農業法人(有)小鹿農業生産組合を設立した理由を教えて下さい。
 

 小鹿酒造は安心・安全・品質第一をモットーに、農業と直結した焼酎造りを続けています。我々がこれまで焼酎造りを続けて来られたのも、地元のさつま芋農家の方々のおかげです。ここ地元大隅は自然に恵まれた、美しく素晴らしい土地。大隅の台地が生み出す、さつま芋は我々にとっても大切な原材料。
農業法人(有)小鹿農業生産組合は、さつま芋の安定した調達と、地元農家の方々との共存共栄を目指すべく、平成6年に設立しました。今では、朝掘りのさつま芋を、そのまま仕込む事ができるほど、生産も安定してきています。蔵と、農家が一丸となって良い焼酎造りに取り組む事ができるよう、小鹿酒造では、契約農家に対する買取保証や自然災害時の損失補償制度、農業機械の共同購入の推進など、農家の方々が安心して良質のさつま芋を作ることができる体制を整えています。また、大隅は農業によって支えられている地域でもあります、それゆえ農家の後継者問題についても出来る限り支援していきたいと考えています。若い人たちが安心して農業を継ぐことができるよう、担い手の育成にも力を入れています。



Q.九州新幹線全線開通による今後の展望は?

 鹿児島には「だれやめ」という文化があります。鹿児島弁で「だれ」=疲れ、「やめ」=止めること。その日、一日の疲れを癒すための焼酎、家庭で飲む、普段使いの焼酎こそが小鹿が目指す焼酎ですが、焼酎の価値をより分かりやすく伝える為、付加価値を感じていただける商品の開発にも力を入れていきたいですね。特別限定販売の「天と地と人と」という焼酎も、その一つです。
「天」の恵み、「(大)地」の力、「人」の技と心で育てられてきたことに感謝し、これからもそれらを大事にすることによって成長していく企業であり続けたいとの思いを込め、国産米を麹用米に、黒麹で醸した原酒を、甕壺の中で2年間じっくり寝かせました。長期熟成酒特有のまろやかな甘みと柔らかい口当たりがの焼酎に仕上がっています。

九州新幹線が全線開通することで、鹿児島の焼酎が全国の人々に親しまれるようになることはとても喜ばしいことです。我々は、これまで通り、焼酎文化が根付いている鹿児島の人々に喜んで頂ける焼酎造りに邁進していきたいと考えています。もちろん、九州は鹿児島の他にも焼酎文化の強い地域もありますので、九州で暮らす多くの方々に小鹿の焼酎を愛して頂けるように頑張りたいですね。

 

小鹿酒造株式会社
鹿児島県鹿屋市吾平町上名7312
TEL. 0994-58-7171
HP:http://www.shochu-kojika.jp/

付加価値のある焼酎造りに取り組んでいる小鹿酒造。2009年には国産米を使用した黒麹と、小鹿農業生産組合が丹精込めて栽培したさつま芋、そして大隅半島の国見山系天然水で仕込み、丁寧に蒸留した原酒を甕で熟成させた本格いも焼酎「天と地と人と」を発売。第6回インターナショナル福岡ギフト・ショー2010の新製品コンテスト食料品・飲料部門で大賞を受賞した。他にも朝掘りの芋と香りを出す白麹、うまみを醸し出す黒麹をブレンドして仕込む季節限定焼酎「美(うま)し里」など、こだわりの焼酎を造っている。