生産者の顔が見える・想いが伝わる
そんな焼酎を、ただ愚直に作るだけ

     小正醸造株式会社常務取締役 小正芳嗣さん

 
 明治16年創業、鹿児島で生まれ育った小正醸造株式会社は、ただひたすらに焼酎一筋に歩み続けている。歴史ある企業だが、常に時代の先を読む姿勢を忘れない。原材料のトレーサビリティーシステムを導入し、「生産者の顔が見える」「安心安全」な焼酎作りの先頭を走っている蔵元だ。なかでも「生産農家あっての焼酎づくり」をカタチにした銘柄が「蔵の師魂」である。

Q.焼酎造りへの想い・コンセプトは?

 平成4年に金峰町のある農家さんと出会いました。黄綬褒章も受章された、東馬場伸です。東馬場さんとの出会いで、小正醸造の焼酎づくりの方向性が見えてきたと言っても過言ではありません。安心・安全な栽培を心がけ、丹精に育てた東馬場さんの黄金千貫は、天皇賞を受賞するほどのさつま芋です。東馬場さんと様々な話をする中で、“こんなに頑張っている農家さんと共に焼酎を作りたい”という想いが生まれました。まだその頃は「安心・安全」が叫ばれている時代でもありませんでしたが、これからはそのような“生産者の顔が見える”ことこそが大事だと思いました。東馬場さんが作る金峰町のさつま芋と金峰町産のコシヒカリで作った焼酎が「蔵の師魂」」なんです。それから、今では全ての契約農家の方々と顔の見えるお付き合いをさせて頂いています。芋の選別も5段階評価から9段階評価へと厳しい基準になりました。また、販売先もどこでもかしこでもというわけではありません。販売先さんとは取引をする前にうちの蔵に見学に来てもらっています。せっかくの想いが込められた焼酎ですから、その価値が販売先に伝わらなければ意味がありません。



Q.平成19年に設立した小鶴農園の目的はなんですか?

 1つは、我々は農家さんから芋や米を頂いて焼酎を作らせてもらっているわけですから、僕らもより農業に近いところにいないといけないという気持からこの農園を作りました。社員1人1人が苗植えから芋掘りにかかわり、農家の芋作りへの想いを感じとっています。また、新しい焼酎開発のための実験農場として、さらにお客様の体験農場としての役割も担っています。




Q.今、小正醸造が一番力を入れていることはなんですか?

 酒質のブラッシュアップですね。近年、芋焼酎が世の中に広がった理由の一つとして、“飲みやすさ”ということがあると思います。昔は非常に芋臭いというイメージがありましたからね。しかし今は芋の品質管理をしっかりしているので、だいぶ飲みやすくなったんだと思います。しかし、最近では「もっと芋らしい焼酎はないのか」と聞かれることが多くなりました。芋焼酎は飲みやすくはなったんだけど、逆につまらない、芋らしさを感じないと。そこで芋焼酎の本当の良さについて考えているところです。芋らしさが徐々に、そして嫌みなく感じられる焼酎というものを、これからは作っていかなければならないと思います。飲み飽きしない焼酎、いつも飲む人の側にある焼酎。そんな焼酎を作りたいですね。」
 
小正醸造株式会社

鹿児島県日置市日吉町日置3309
TEL. 099−292−3535

HP:
http://www.komasa.co.jp/

 
 


小正醸造の代表銘柄「小鶴くろ」が2010年7月にリニューアル。より芋らしく、力強い焼酎に生まれ変わった。また、斬新かつ秀逸なCMでお馴染みの「黄麹」は鹿児島県民に根強い人気をもつ。1957年から愛飲され続けている長期貯蔵焼酎「メローコヅルエクセレンス」は、2009・2010年モンドセレクションのスピリッツ及びリキュール部門において最高金賞を受賞。