日本古来より親しまれてきた蕎麦福岡では珍しい、そばの香りに負けない醤油のつゆ
大将の語りを聴きながら、日本文化に想いをはせる。
蕎麦の原点がここにあり
「赤間茶屋あ三五」
蕎麦一筋40年余りの大将、磯部久生氏。
蕎麦が生まれた日本の歴史、そして文化に精通し、蕎麦に対するこだわりが徹底している職人だ。流れるような動きで蕎麦を釜で茹で上げる大将。あ三五のそばは、目の前に出されるその瞬間までの過程を見て楽しむことができる。
あ三五で食せる珍しい蕎麦のコースは、前菜からシメまですべてに蕎麦が使われている。リクエストをすると臨機応変に趣向をこらした様々な蕎麦料理たちを振る舞ってくれる。
あ三五が旬を織り込みながらつくる蕎麦。秋は銀杏、正月にはフキノトウ、緑の新芽が息吹く春先には山椒、夏が始まるとミョウガや新生姜、そして柚子と四季を蕎麦の風味で感じることができる。様々な蕎麦の風味は、知られているものでおよそ56種類に及ぶ。大将選りすぐりの季節が香る蕎麦は、あ三五を訪れる楽しみの一つでもある。
「蕎麦は本来体の弱い人のための食事だ」と語る磯部氏。食が通らない年配の人でも、あ三五のそば懐石だと不思議と食せると言う。それは大将の思いやりが「蕎麦」として身体にやさしく沁みるからだろう。
あらゆる文献を読み解いてきたであろう大将の話は、蕎麦にちなんだ日本の歴史のみならず考古学にまで及ぶ。海外からの客人にはたいへん興味深い日本の一面を伺い知ることができるかもしれない。