「ご馳走」のあるべき姿をこの場所で再認識するだろう。昭和37年創業、鹿児島で最も古いステーキ専門店「ステーキハウス藤安」。

子供の頃、誕生日や、家族のお祝いなど、たまに行く外食に胸を弾ませたことがあるはず。肉の焼ける香ばしい匂い、鉄板でプツプツと小さな気泡を立てジュージューと音を立てるソース。ここ「ステーキハウス藤安」は店内に足を踏み入れた瞬間から、心踊る特別感に溢れている。

約50年という歴史から、肉の仕入れ業者との信頼関係も出来上がっている。３代目となった今でも、肉へのこだわりは変わらない。言わずもがな極上の鹿児島県産黒毛和牛を使用。

１週間かけて牛スジなどを煮込んだフォンドボーに香味野菜等を加えて作るソースは、十分なコクがあるにも関わらず、さらりとした後味に、角のない優しい味わい。創業時から継ぎ足されこの味は守られている。さらに、添えられたバターから、ほのかなからしの風味。牛肉・ソース・バターは三位一体となり抜群のバランス。
肉やソースの旨さはもちろんのこと、サラダ・スープにも注目して欲しい。
角のない優しい味わいは、これから運ばれてくるメイン料理への期待を一層膨らませてくれる。

藤安のレシピは、約50年前の創業時のレシピがそのままに受け継がれている。
約50年も前に、この味と出会った人がいるという事を考えると、「藤安」のステーキの奥深さが増す。

昭和37年創業の「ステーキハウス藤安」。創業者は、かつての南満州鉄道株式会社が経営していた格式ある高級ホテル、「ヤマトホテル」でフレンチの料理人として腕を磨いた。その後、古郷鹿児島に戻り、「ステーキハウス藤安」を開業。当時はフランス料理は敷居が高すぎるという事から、ステーキハウスをオープン。

現オーナーは３代目となる東雄一郎さん。大学に通いながら２代目である父親とともに厨房に立ち、卒業後父の意志を引き継ぎ現在に至る。専門の学校に通っていない事を謙遜する東さんではあるが、それ故人一倍努力をするシェフと最近の若手シェフの間では一目置かれる存在。

厨房での仕事を一人で担う東さん。ランチ・ディナー、仕込みと忙しい日々を送る中、時間を縫っては、先輩料理人の集まる会や、ワインの会と足を運ぶ。

50年近く続く味を守り続けながら、今のニーズに柔軟に対応していく。
ステーキと相性の良い、ワインをもっと楽しんでもらいたいという思いから、ソムリエの資格も取得。

「まだまだ、勉強しなくては」と笑顔で日々を振り返る東さん。
厨房での懸命な姿、丁寧なお客様との会話から、「またここのシェフが焼いたステーキを食べたい!!」そう思わせてくれる。

ステーキハウス藤安の客層は実に幅広い。子供から８０代と年配の方まで。
カウンターで一人でステーキをじっと待つ人。孫の世話を焼き、ハンバーグを頬張る人。夫婦二人で、ワインとステーキで会話を弾ませる人。初めてのデートと予想させる初々しいカップル。

様々な客層がいるにも関わらず。誰一人として違和感を感じない。幅広い世代に愛される、まさに「ファミリーレストラン」のあるべき形。

ステーキハウス藤安には、４代続く常連客も多い。「小さかったお客様が、恋人を連れてきて、やがて結婚、出産そしてそのお子さんがまたご来店される、本当に嬉しい事です」と優しい表情で目を細めるのは、２代目のマダム。

温かな空間に、美味しい香り、家族のように迎えてくれる優しいサービス。

店内はカウンター、テーブル席の他に、掘りごたつ式の座敷もある。
「年配の方や、体が不自由な家族に食べさせたい！」　という要望からテイクアウトもしている。


月に一度の自分へのご褒美や、家族の誕生日など、藤安はハお祝いごとなど「晴れの日」が良く似合う。